トニー滝谷
村上春樹の短篇小説を市川準監督が長年温め続けて来た企画として映画化。小説の持つ匂いや低い温度感を、実験的な手法と透明感溢れる映像によって繊細に描き出した。『風の歌を聴け』以来、村上春樹作品の数少ない映画化である。トニー滝谷とその父の二役を、イッセー尾形が、トニーの妻と妻によく似た女性の二役を、美しさと演技力がますます光る宮沢りえが、それぞれ演じている。音楽は、坂本龍一が、ピアノを基調にした静謐で美しいサウンドを創り出している。
一言で言うなら「耽美的」な作品。美しい映像と美しい音楽にどっぷりはまって、うっとりしている間に終わる。部長はこの作品のDVDを一日中BGM替わりに流していた。ガラスのない窓を生かした映像は特に美しい。
亀は意外と速く泳ぐ
何をやっても目立たない平凡な主婦が、「スパイ募集」の貼り紙を発見!“脱・平凡”を期して面接に向かうと、その平凡さこそスパイに最適と絶賛されて、採用決定!しかしそのミッションとは、“目立たないように静かに平凡に過ごすこと”だった・・・!
監督は、シティボーイズライブの作・演出や、「ダウンタウンのごっつええ感じ」など人気バラエティ番組の構成を手がけてきた才人、三木聡。他愛ない小ネタが随所に織り込まれ、洒落たセンスと絶妙なゆるさがたまらなく心地よい、オフビートな“脱力系”奥様スパイ映画。主演は上野樹里、共演に蒼井優。さらに岩松了、ふせえり、要潤、伊武雅刀、松重豊、温水洋一、嶋田久作ら演劇界の鬼才、個性派俳優が大挙して出演。そんな曲者役者たちがそれぞれ持ち味を発揮し、抜群のアンサンブルで笑いのつぼを押しまくる!レミオロメンによる主題歌が、ゆるゆるワールドを爽やかに締めくくって心地よい。
いわゆるB級映画。脱力系だが「平凡って、普通ってなんだっけ」と改めて考えさせられる。バカバカしいだけで片づけられないストーリー。まあバカバカしいんだけど。
花とアリス
ハナとアリスは同じバレエ教室に通う中学生。あるときハナは通学途中で出会った手塚高校の宮川先輩を好きになる。翌年、ハナとアリスは一緒に手塚高校に進学。さっそくハナは宮本先輩が所属する落語研究会に入部すると、先輩の尾行を開始した。一つの嘘が更なる嘘を呼び、少女と少年の可愛らしい三角関係が、色々な人々を巻き込んだトリッキーな三角関係へと変貌を遂げる。
岩井俊二監督作品。おじさんが思う女子高生のイメージをモリモリに盛り込んだ、おじさんこそ楽しめる作品。リアリティは求めず、美しい映像と音楽を楽しむのがこの作品の楽しみ方。主演の二人の演技も瑞々しくて良い。
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