夏休みの美術の宿題に悩んでいる部員の皆さん、こんにちは。
美術部ならそんなに困っていないとは思うが、一応、今回は改めて夏休みの宿題のコツをお伝えしようと思う。
とはいえ学校によって宿題は様々だと思うので、今回は絵画制作に絞ってお伝えしよう。別のジャンルはまた別の機会に。
夏休みの宿題(絵画)のコツ
絵画の場合、「夏の思い出」など、テーマが決められているか、「自由」のいずれかと思われる。いずれにせよ、絵画としてのクオリティを求められているので、ただ風景を描いたり、飼い猫を描いたりするだけでは他の生徒との差別化は図れない。ましてや
夏休みに海に行ったからといって青だけでこんな風にパパっと終わらせちゃダメだぞ。
まとまった時間がある夏休み。本当はこの機会に一つの作品にじっくり取り組んでもらいたい。とはいえ学生は忙しい。今回のコツを押さえれば1日もあれば描けると思う。
規定を守る
まずは課題の細かい規定を確認する。
コンクールに準じた課題の場合は、テーマや画用紙のサイズ、使っていい画材が指定されている場合がある。または標語や入れなければいけない言葉がないか、チェックしておこう。
アイディア出し
テーマに合わせて、実際に体験したことや思い出を箇条書きでいいので書き出していこう。
その時の感情なども併せて書くと作品のイメージが膨らませやすくなる。
テーマが自由な場合も同様に体験したことをもとにイメージするとよい。
いずれの場合も、できれば「自分だけの体験」があるとよい。海に行く経験はみんなあるだろう。しかし「海でカニを捕まえて食べた」とか「兄弟で泳いだ」とか、なんでもいいから、少しでも他の人と差別化できるような体験を思い出してほしい。ありきたりな経験からイメージをふくらませても、ありきたりな作品にしかならない。
エスキースをしよう
描きたいことが決まったら、次はエスキースをしよう。
エスキースとは「作品を制作するためのイメージやアイディア、あるいは構図を描きとめた下描き」のこと。
いきなり画用紙に描き始めるのではなく一度エスキースをして構図や色を考えよう。
一度エスキースをするだけでも作品のクオリティは大きく変わる。
一発描きで構図も色も完璧な作品など天才でもなかなかできることではない。
スケッチブックでもチラシの裏でもいいので一度どんな作品にしたいのか簡単に描いて考えてみよう。
構図を考える
エスキースで考えるのは大きく分けて「構図」と「色」だろう。
まずは構図についての工夫のポイントをいくつか挙げてみよう。
構図を考えるということは、その作品はある意味フィクションであるということ。
見たままを写実的に嘘偽りなく再現することが絵画の目的ではない。
写真ではなく、一度自分を通して表現する意味がそこにある。
見たままを絵にするのではなく、一度頭の中でイメージして、そのイメージを効果的に伝えられるように切り取る(トリミング)していこう。
位置関係
同じような風景でも、手前に草などを描くことで画面に奥行きが出る。
要素が増える分、ゴチャゴチャした印象になったりすることもあるが、使い方次第だ。
「奥行きや広がりを見せたい」とか「空を見せたい」とか目的に合わせて構図を考えよう。
また、画面を横向きの構図にすることで、縦とは違った印象を与えることもできる。
縦の構図の場合、手前から奥への広がりが強調され、横の構図の場合、空や海などの横への広がりをより強調する構図になる。
視点を工夫してみる
ありきたりな体験でも視点を工夫することで面白い作品をつくることができる。
見上げたり、見下ろしたり、想像でもいいので、構図を考える段階で工夫してみよう。
空間をつくる
構図を考える段階で、「あえて空間をつくる」ことを意識してみる。
空間があると、吹き出しのように「そこに何かあるのではないか」と想像してしまう。
物思いにふけっている人物の横に空間があると、考えているということが伝わりやすくなる上に、その空間に意味を求めてしまう。
必ずしも主人公を真ん中に配置しなくてもよいのだ。
ドラマをつくる
ただの風景でも、そこに人物を少し描き加えるだけで、ドラマが生まれる。
人物がいるだけで、人物の関係性やこの後のストーリーなどを想像してしまうだろう。
想像を搔き立てるような要素を描きこむことで作品に深みが出る。
人物の他に、時間の経過が分かるモノ(使い古した物や足跡、脱ぎ散らかした服など)や向かう先の風景などを描くと想像を掻き立て、ドラマを生むことができるだろう。
作品が物足りないならドラマをつくってみよう。
色を考える
構図がある程度決まったら次は色を考えていこう。
エスキースで描いた構図に、いろいろな色を試し塗りしてみよう。
色について考えていく際の工夫のポイントを以下に挙げていく。
配色を考える
まずはそれぞれのモチーフの色を考える。ここで押さえておいてほしいのは「必ずモノそのものの色を塗らないといけない」ということではないということ。
画面全体のバランスを見て、モノの色変えたり、調整したりしてもよい。むしろ、そうするべき。
色のテーマを決める
色のテーマ、大まかな色の印象を決めると統一感のある作品になる。
モノクロやパステル、ビビットなど、作品をパッと見たときどんな印象を与えたいのか、またはモチーフによって色のテーマを考えてみよう。
モノクロは洗練されたクールな印象や無機質なイメージ、寂しいイメージを与えやすい。パステルはやわらかさ、優しさ、温かいイメージ、ビビットは賑やかで元気、明るいイメージを与えやすい。
色味を考える
必ずしも「見たままの色」を塗らなくてもよい。
それぞれの色に黒や黄色などを少し混ぜることで、色味を整え、統一感をもたせることができる。
絵の具の原理としては、色をいくつか混ぜると「彩度」が落ちる。その「彩度」を調整して全体の色味を合わせていくということ。
色味を統一すると落ち着いた画面になる。逆に、鮮やかさや元気な印象は失われるので、表現したい世界観にもよるが、憶えておいて損のないテクニックだろう。
画材を考える
エスキースをして、ある程度作品の方向性が決まったら、次は画材を考えてみよう。
学校で使用する水彩絵の具しか使ってはいけないということはない。
夏休みのこの機会に色鉛筆やマジック、クレヨン、墨汁など作品の雰囲気に合わせて画材も工夫しよう。
描き上げる
ここまで決まったらあとは描き上げる。
テーマも構図も色も画材も決まっているのであとは描き上げるだけだ。健闘を祈る。
四つ切りサイズくらいなら休まず一気に描き上げた方がいいだろう。
着彩で失敗したと思った時、慌てて、どうにかしようといじくりまわすと、大体ろくなことがない。焦らず一度乾かして、その間休憩し、作品と距離を置くのも良い。
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