美術館の楽しみ方

美術部へ

美術部員ならみんな美術館に足を運んだことがあるだろう。ハマった部員もそうでなかった部員もいると思うが、今回は部長なりの美術館の楽しみ方を紹介したいと思う。これを機に、改めて美術館に足を運んでいただき、新たな発見があれば幸いである。

美術館は合コンだ

そもそも美術館の楽しみ方は人それぞれだ。ここではあくまでも部長の個人的な楽しみ方をお伝えする。楽しみ方を押し付けるつもりはないので、こんな楽しみ方もあるんだというスタンスで読んでもらいたい。

美術館というと、小難しい作品が並べられ、理解できないものは嘲笑われる「試される場」というイメージをもつ部員もいると思う。美術の知識と理解力を試されるようで身構えてしまうかもしれないが、部長としてはそんなに肩ひじ張らず、好きな作品をひとつ見つけられたらラッキーぐらいに思ってくれたらと思う。
そこで「美術館は合コンだ」と思うと気楽に楽しめると思う。美術館には作者が人生を掛けて作った作品がいくつも並べられている。まさに魂の込められた作品達だ。鑑賞者はその作品一つ一つと相対し(作品と会話し)次の作品に移っていく。全作品と相対しなくてもいいし、ひとつの作品に時間をかけて会話してもいい。そしてお気に入りの作品が見つかったら、帰りにその作品のポストカードを買ってお持ち帰りする。家で100均の額縁にでも入れて飾れば、それだけで生活に潤いが生まれる。
そうやって、お気に入りを探しに行く場所だと思えば、気楽に楽しめるのではないだろうか。もちろんハズレの場合もあるし、生涯愛し続けるような作品との出会いもあるかもしれない。展示されている作品を全て理解しなければいけないことはないし、好きにならなくてもいいのだ。

あくまでもイメージ

鑑賞の方法

次に鑑賞の方法(作品との会話のテクニック)について紹介しよう。
美術館では鑑賞するスピードは人によってまちまちで、部員の中には「みんなあんな長い時間、作品の何を見ているの?」と疑問に思っている部員もいることだろう。

スキャナー鑑賞

作品をまずパッと見て、その印象を大事にしつつ、端から順になめるようにじっくり見ていく。左上の端から下に見て、そのまま右にずらして、また上に見ていく。そして最後は右上の端にたどり着く。自分がスキャナーになったつもりでゆっくり鑑賞してみよう。そうするとパッと見では気がつかなかった細かい描写や描き方、表現に気がつくことがある。なんならそのスキャンを数回繰り返す。
一作品の鑑賞時間を5分とか10分とか決めて、たとえ飽きてもその時間は眺めておくという方法もある。もちろんそれが苦痛なら次の作品に移ってもいいのだが、一回目のスキャンでは気がつかなかったことに気がつくこともあるだろう。むしろ、その作品の作者は何時間もその作品に相対し考え、描き上げてきたことを思うと「たかが5分で何が分かる」と思うかもしれない。

気がついたことと最初の印象をすり合わせると、印象が変わったり、新たな気づきがある。最初は分からなかった作品名に合点がいったり、作者の意図にたどり着いた感覚はクセになるほど気持ちがいいものだ。じっくり鑑賞するからこそたどり着ける境地もあるだろう。
ただ、この鑑賞方法は時間が掛かる上に、集中力を使うため、非常に疲れる。余裕がないのなら、次に紹介する一本釣り鑑賞がいいだろう。

一本釣り鑑賞

時間や余裕がない場合、その全ての作品でスキャナー鑑賞をするのではなく、気に入った作品にだけ、あるいはこれという作品を決めて、スキャナー鑑賞するという「一本釣り鑑賞」がある。
展示会にはだいたい目玉作品というのがある。開催者側が「一番目を引き、お客さんを呼びこめるであろう」と思っている作品のことで、展示会のポスターに大きく掲載されているパターンが多い。一番有名な作品や展示会の世界観を象徴する作品であることが多く、確かにいい作品が多い。なので、この目玉作品に狙いを絞り、後の作品はサラッと流し見で済ませる。
目玉作品以外にも一度展示会全体を流し見で通して見て、その中から気になった作品に戻って鑑賞する方法もある。制限がない限り、戻ることは別に悪いことではない。
この鑑賞方法は効率はいいが、流し見の作品にあったかもしれない意外な出会いや発見が少なくなるため、ややもったいない感がある。ただ、体力を温存できるため、展示会のハシゴをする時は有効。

作品名あて鑑賞

キャプション(作品の近くにある作品名や作者名が書かれたプレート)を見ずに作品を鑑賞し、作品名を予想してからキャプションを見て答え合わせをする鑑賞方法。作者の意図と自分が捉えた印象、受け取ったメッセージのズレを楽しむことができる。当たっていれば気持ちいいし、ズレていたとしても、なぜズレたのか考えると面白い。また、作品名を知った上で、改めて鑑賞すると新たな発見があったりする。合コン中に会話に飽きたらゲームをする感じ。

ツアー鑑賞

展示会によっては音声ガイドがある。または美術館の学芸員やボランティアが同行する旅行のツアーのような鑑賞方法もある。お金がかかったり、時間や人数の制限があったりするが、主催者の意図や学術的な研究の上での正しい解説を聞きながら鑑賞できるため、学びは多い。ただし、巡る順番やスピードが制限されたり、作品と自分の二人きりの時間がなくなってしまう。合コンというよりお見合いのような空気だろうか。

孤独鑑賞

解説もガイドも頼らず、キャプションも見ない鑑賞方法。作品とだけ向き合い、答え合わせもしない。というか、もともと芸術に正解などないのだ。自分が感じた印象、受け取ったメッセージが全て。他のことなどいらない。その蓄積の先に自分だけの世界観がある。

図録を買おう

だいたいの企画展では、図録が売られている。展示会で展示された作品とその解説が全て掲載された図鑑みたいな、画集みたいな本のことで、開催した美術館や企画した企業などが制作している。図録をお勧めする理由は、図録で鑑賞した時にはじっくり見られなかった作品を補完したり、鑑賞したときには気がつかなかった発見があったりする。後日思い出したり、振り返ることもできる。そしてなにより、その図録はその展示会場でしか買えない。基本的に展示期間中に売り切れる分しか印刷していないし、本屋で売られることもないので、その展示会が終わってしまうと、その後買うことができない。厳密にはその美術館のグッズ販売所で売れ残っていた図録は販売しているし、ネットで買うこともできなくはないが、非常に入手困難になる。一期一会と思って、気に入った展示会の図録は買って帰ろう。部長は訪れた展示会の図録はなるべく買うようにしている。何かあれば読み返したり、本棚に並べられた図録を見て「こんな展示会行ったなぁ」と思い出にふけたりする。

ギャラリーの楽しみ方

美術館ではなく、ギャラリーに行くという楽しみ方がある。
美術館で展示される作品は、ある程度、学術的に価値があるとされている作家や作品に限られる。少なくともある程度の研究がなされ、美術史の枠組みのどこかに位置付けられた作品だ。
しかしギャラリーの扱う作品は玉石混合。有名な作家の作品もあれば、駆け出しの若手の作品、カルチャースクールの作品展、ベテラン作家達のグループ展、美大生の作品展など様々だ。

現役の作家の場合、売れっ子でない限り、美術館で展示されることは少ないので、その作品を見られる場所はギャラリーでの個展になる。これらの作品に価値がないということではなく、研究がなされていないために価値付けができていないということ。
そのため、ギャラリーに足を運ぶと、ハズレもあるが、思いがけない出会いがある。そして、美術館の作品は売っていないが、ギャラリーの作品は基本的に販売を行っており、作品を買うことができる。今後価値が上がるかもしれない作品を買えたり、単純に好きな作品を手元に置く喜びがある。
また、現役作家の場合、作家本人と直接会うことができる。個展の場合、オープニングパーティやクロージングパーティが催される場合もある。作家やその関係者と話すこともできるかも。
そういう意味では美術館より美術がより身近に感じられる場所なのだ。

ギャラリーにはDM(展示会の案内のためのポストカード)がいくつか置いてある。訪れたギャラリーで別の展示会のDMをもらって、次はその展示会に行くと、数珠繋ぎのようにギャラリーをハシゴすることができる。訪れた展示会のDMを綴ってコレクションするのも楽しい。DMに直接、その展示会の感想を書き込んだりすると、後々見返す楽しみが増える。

結論:楽しみ方はいろいろ。ぜひ美術館に足を運んで、よい出会いを。

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