美術系高校ってどんなところ?

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美術系高校とは美術科または美術コースがある高校のこと。

将来、美大進学を希望する場合、美術系高校への進学を視野に入れると思うが、美術系高校ってどんなところなのか?
その実態を経験者からお伝えしようと思う。

美術科のある高校ってこんなところ

普通科ではなく、美術科が設定されている高校。美術コースと比べて、専門の時間が多い。
その分、専門の技術や知識が習得できるので、美大への進学は有利になる。コンクール等への作品制作時間も多いため、実績も作りやすい。また、美術に興味のある仲間と切磋琢磨できるためスキルアップも早くなる。

専門の授業が半分を占める

1年生では3分の1程度、2・3年生になると全授業のうち、半分が専門の授業になる。
専門の授業では絵画やデザイン、彫刻など様々なジャンルの美術を実習する。
素描(デッサン)や美術概論、美術史、コンピューター造形など、より専門的な授業もある。
新たに好きなジャンルが見つかることもあるし、改めて得意なジャンルが分かることもある。
美術が好きな生徒にとっては天国とも言える状況だと思うかもしれないが、そんなに甘くはない。
美術が好きで入学しても、得意、不得意なジャンルが分かれてくる。
得意なジャンルの授業は楽しくてしかたないが、苦手なジャンルの授業は苦痛だったりする。
1~4校時ぶっ続けでデッサンとか、丸1日絵画の日とかあるので、「少し美術に興味がある」程度で入学すると地獄をみることになる。美術に限らず、専門性の高い高校を選ぶときは慎重に選ぼう。

授業では課題が出される

専門の授業では、各授業ごとに課題が出され、提出後は講評会やプレゼンをするパターンが多い。そして、いくつかの課題を同時に抱えている状態になる。
例えば、今週はデザインの締切りで、来週はデッサンの締切りといった状態になる。課題によって制作時間が長かったり短かったり、教室から動かせるものや、動かせないものもあったりするので、計画的にこなしていかなければならない。締切りが重なったり、場所が確保できないなどのトラブルで、時間が足りなくなり、上手くいかないままの作品を提出すると、講評会では全員の前でフルボッコになる
とはいえ、講評会で専門の先生から直接アドバイスがもらえたり、改善点を指導してもらえること、クラスメイトと同じ課題をこなしてく中で、相談し合ったり、悩みを共有できたり、切磋琢磨していくことができるのは美術系高校の大きなメリットだろう。

残りの半分は普通の授業

そして残りの半分は普通の5教科や体育、家庭科等を学ぶ。美術科を選ぶと音楽の授業が無くなる。
美術科だからといって、美術だけを学べるわけではなく、普通に英語や数学もある
普通教科ができなくて単位保留、最悪、留年なんてこともあり得るので気をつけよう。
勉強からは逃げられないぞ♡

普通大学への進学には不利になることも

半分が専門の授業ということは、5教科の授業が普通高校に比べて半分になるということ。そうなると、当たり前の話だがその分、授業内容も半分しかできない
例えば、数学はⅠ・Aまで、理科は生物と地学だけ、社会は倫理と世界史だけ、というふうに制限される。授業時間が少ないのだから仕方がない。大体は美大進学に必要最低限の授業しか設定されていない。
そうなると、美術科から普通大学に進学したいと思った場合、試験で不利になる。
習っていない科目、数学Ⅱ・Bとか物理とか日本史などは自分で勉強しなくてはいけない。
まあ、学校側も、3年生になると、試験対策の時間を取ったりするので全く教えてくれないわけではないのだが、時間は少ない。足りない分は自習か塾で補うということになる。
あるいは推薦で行く方法もある。
普通大学には絶対に進学できないということではないが、不利になることもあるということは覚えておいてほしい。

美術コースのある高校ってこんなところ

普通科のなかに美術コースが設定されている高校。
普通の授業とコースに分かれて専門の授業がある。
美術科に比べると専門の授業が少ない。また、美術教師の人数や設備にも差がある。

美術科に比べて専門の習得に不利である

美術科に比べて、授業数も少なく、設備も充実していないので、専門の習得は不利になる
そして美大を受験しようと思うなら美術科の受験生と争う時、その差がハンデになる。

美術以外の道への軌道修正がしやすい

専門の授業が少ない分、不利に思うかもしれないが、その分普通教科が多いということ。
美術科に比べると普通授業が充実している。
普通大学へ進学する場合、試験において、美術科よりも教科の壁は少ない。
また、美術科の場合、もし美術が嫌になったからと言って、転科をしようとすると、振替ができる科目が少ないため、すごくハードルが高い。転科できなければ、同じ美術科のある高校への転校か、受験しなおすしかない。しかし転コースは転科に比べれば、ハードルは低い。それでも振替できない科目もあるかもしれないので、ハードルがあるにはあるが、転科よりは現実的だ。
つまり美術コースは、美術科に比べて、美術以外の道への軌道修正がしやすいと言える。
美術に興味はあるが、将来、「絶対美大に進学する」とか「美術系に就職したい」という強い意思がまだ決まっていない場合、美術科よりも美術コースの方がいいかもしれない。
もちろん美術コースから美大受験もできるし、美術系の専門学校への進学や美術系への就職もできる
ただし、美大受験の場合は専門的技術を美術予備校で補うなどの対策が必要になるかもしれない。

仲間と切磋琢磨できる

美術科、美術コースいずれにせよ、同じ美術好きな仲間が集まって、同じ課題をこなしていきながら切磋琢磨できる環境は素晴らしいと思う。
同じ課題、同じ年齢でも視点や切り口、考え方にこんなに差が出るのかと思い知らされる。実力の差に打ちひしがれることもあるかもしれない。逆に一番自信が持てるジャンルを見つけることもできるだろう。
美術科も美術コースも、大体クラス数が1~2クラスなので、3年間ほぼ同じクラスメイトと過ごすことになる。個性的なメンツが集まるので、ぶつかる場面も多いが、気が合う仲間とは今後一生の友となることもある

制作活動の苦しみは経験者通しでしか分かり合えない。

仲間と切磋琢磨できる環境に身を置くことができる」のは美術系高校の最大のメリットだろう。

学費について

学費については一般的に美術系高校では普通科よりも高額となるケースが多い。これは道具・画材に費用が掛かる為だ。また、美術系高校でも私立と公立だと私立の方が学費は高い。
とはいえ、入学時に購入すべき道具は多くない。それよりも、制作を続けていく中で、買い足したり新たに買ったりする画材の方が多く、人によっては高額になる。
特に彫刻や絵画をしようと思ったら石膏や絵の具、キャンバスなどの画材に費やすことになるだろう。
初期投資でドンと掛かるというより、日々の制作でチビチビ出費がかさむイメージだ。
普通校よりはお金が掛かるかもしれないが、その分は作品として残るし、なにより経験になる。公立ならそこまでの金額差にはならないと思うので、美術が好きなら諦めないでほしい。
この辺りのお金の話は、ぜひ志望校を決定する前に親と相談してもらいたい。

結論:大変なことも多いが、仲間と切磋琢磨できる素晴らしい環境

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